エスカレータの立ち位置

昔からエスカレータのステップに巻き込まれる事故はよくありました。「黄色の線の内側にお立ちください」という警告は、何度も聞かされているので、体が覚えています。最近は、定番の長ぐつに加え、着物やスカートの裾、サンダルなども要注意として挙げられています。あとは手すりにつかまってじっと立っていれば安全だと思いきや、相変わらず事故は発生しており、「管理責任は?」という犯人探しがマスコミをにぎわせています。

犯人にされてはたまらないとばかりに、先進的な警告文が張り出されていました。「必ず」ステップの中央に立ちなさいというものです。

図を見ると、「子供を守りなさい」という風に読みとれるのですが、文面には子供を特定する文字は見あたらず、利用者は「全員守りなさい」と読めてしまうのです。

警告のあるエスカレータは一般的なエスカレータと同様に2人分の幅があります。その証拠に、ステップの上には2人分の足跡のマークが表示されているのです。混雑時にも多くの人が速やかに利用できるようにという意味でしょう。ところがこの警告文面は、すべての人に対して、中央に立ちましょうという風に読みとれ、どう行動して良いのか困惑してしまうのです。

[快適な行列]エスカレータも一列に誘導で取り上げましたが、歩く人のために片側を空けてあげるというのは、エスカレータの設計上は想定外の利用方法で、危険な行為とされています。しかし、現実には譲り合いの精神が一人歩きし、暗黙のうちに片側を空けることを強制されることになっています。いやな思いどころか危険な思いをしているということを聞きます。安全のために子供と手をつないで並んいる親子連れに、「右側を空けるのがルールだ」と勘違いを押しつけることもあるようです。

今回取り上げた警告は、巻き込み事故を機に、エスカレータの正しい乗り方を定着させようという隠れた目的があるのではないかと思うのです。良いことですが、唐突すぎます。

今までは2人並べと言われていたところ、突然「中央」しか安全でないというわけです。一人で実行しようと「中央」に立てば、「右側を空けるのがルール」だと邪魔にされることでしょう。この様な警告があったところで、無視されてしまっているのです。

まずは片側を空けることを当然と思っている周りの人への警告から始めないと、何も変わらないと思うのです。例えばこんな感じで1ステップづつ進めて行く必要があるでしょう。

  1. 中央に立ったり、2人で並んでいる人に対し、片側を空けるように強制しないこと。
  2. エスカレータを歩かないこと。
  3. 1人の時は中央に立つこと。

こんな感じで段々と周知していかないと、利用者の間で混乱が起きてしまいます。

そして、ハードウェアの面でも、[快適な行列]エスカレータも一列に誘導で取り上げたように、1人乗りのエスカレータの普及が一番だと思うのです。